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フィルム・アーカイヴ()は、映画のフィルム、および映画に関わるフィルム以外の資料(スチル写真、ポスター、脚本、図書・雑誌、プレス資料、機材、小道具、衣裳など。総称して「ノンフィルム資料」ともいう)の蒐集と保存を行う機関である。映画博物館(film museum)と呼ばれる機関も多く、またフランス語圏ではシネマテーク(Cinémathèque)と呼ばれることが多い。 == 歴史 == 映画が発明されて間もない1898年、写真家ボレスラス・マトゥシェフスキが「歴史の新しい源」という本を書き、映画フィルムも歴史資料として保存する意義があるだろうと初めて述べた。だが、多くの人々が映画を保存価値のあるものと考え、それが実際に遂行されるには長い年月がかかった。西欧やアメリカを中心に映画保存の試みが始まり、そのための専門組織が生まれたのは1920年代から1930年代にかけてである。さらにアメリカ・イギリス・フランス・ドイツの四か国により国際フィルム・アーカイヴ連盟(FIAF)が誕生したのは第二次世界大戦直前の1938年だった。その中心人物が、ニューヨーク近代美術館映画部の創設者アイリス・バリーやシネマテーク・フランセーズ創立者のアンリ・ラングロワである。だがそういった運動が起こる前に、当時のフィルムが可燃性であったことや、そのための火災を恐れた製作者・映画会社が上映後のフィルムを人為的に廃棄したこと、そしてそもそも映画を文化財と見なす意識が社会に欠けていたことによって、各国で無数の映画遺産が失われた。しかし第二次世界大戦後は各国で映画保存の気運が高まり、FIAFの加盟アーカイブは急速に増加した。 もともと映画フィルムは、硝酸セルロース系の材質からなる可燃性の製品(ナイトレート・フィルム)であり、引火時の強い燃焼性だけでなく自然発火の危険性もあった。その危険を克服するため、酢酸セルロース系材質による不燃性製品(アセテート・フィルム)も1910年代から開発が試みられ、家庭向けフィルムには早々と実用化されたが、劇場用の一般映画にそれが使われたのは1950年代のことだった。それ以降、各国の映画会社やフィルム・アーカイブは、可燃性フィルムを不燃性フィルムに転写して、作業を終えた可燃性フィルムを廃棄するという仕事に専念した。だが、フィルムとしての性能は優れているナイトレートの価値がその後再評価され、厳重な火災予防措置のもとでナイトレートのオリジナル素材も引き続き保存することが望ましいと現在では考えられている。またアセテート・フィルムにも加水分解による劣化という大きな問題があり、決して万能な素材ではないことが後に判明している。この劣化は、酢酸を発散するため「ヴィネガー・シンドローム」と呼ばれる。 また、1950年代に開発されたイーストマンカラー以降のネガ・ポジ式カラー・フィルムは、気温や湿度の高い場所に置くと急速に色褪せするという問題が起きており、1970年代にはマーティン・スコセッシ監督など作り手の側もこの問題の重要性を強く訴えた。スコセッシは、世界の映画界でもっとも映画保存の重要性を強く訴えている監督のひとりである。 今日では、多くの国が自国や他国の映画遺産を保存するためのフィルム・アーカイヴを設けている。文化財保存という事業は採算性が低いため、国立・公立の組織が多いが、メジャー映画会社や主要なテレビ放送局が独自のアーカイヴを持つこともある。また、FIAFも重要な役割を果たしており、年に一度の会議を行って各国の関係者が映画の保存やアーカイビングに関わる問題を議論している。日本でも、2007年に東京国立近代美術館フィルムセンターをホストとして初の東京会議が行われた。また2009年には初めて日本人のFIAF会長が誕生した。 デジタル技術の進展にともない、デジタル素材による最終保存の可能性が取りざたされているが、現在もデジタル媒体がフィルムの解像度に追いついていないこと、またデジタル技術の速すぎる進歩のため、デジタル・フォーマットの世代交代の度に全映像をコンバートするのは時間面でも費用面でも非現実的なことから、まずオリジナル素材であるフィルムを確実に保存した上で、各時代のデジタル素材に複製して活用するべきというのが各国のフィルム・アーカイブ共通の結論である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「フィルム・アーカイヴ」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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